ABWとは?フリーアドレスとの違いやメリット、導入手順を紹介!
2022年10月4日
近年は、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの一環で、リモートワークや新たな制度を導入する企業も増え、これまでの働き方やオフィスの価値観が見直されるようになってきました。ITツールが効果的に使えるようになった一方で、社内のシステムづくりや仕組みづくりが思うようにいかず、なかなか社内の改革に踏み切れないというケースもあるでしょう。そこで今回は、海外発祥の新しいワークスタイル「ABW」について解説します。
目次
ABWとは?
ABWとは「Activity Based Working」の頭文字を取った用語で、オランダで誕生したワークスタイルです。仕事内容に応じて、仕事を行うのに最適な「場所」と「時間」を選ぶという考え方になります。
働く場所は、オフィスはもちろんのこと、自宅、カフェ、シェアオフィスなどさまざまです。集中的な作業を行いたいときはオフィスで、自由な発想を得たいときはカフェで、打ち合わせをするときは近くのシェアオフィスでなど、柔軟な選択ができます。
ABWの大きな特徴は、場所だけではなく時間も選べることです。個人それぞれが、自分のパフォーマンスを最大に発揮できる時間に集中して作業を行えるというメリットがあります。近い意味を持つフリーアドレスとの違いやABWを導入しやすい職種についてもチェックしてみましょう。
ABWとフリーアドレスの違いについて
フリーアドレスとは、オフィス内で固定の席を設けず、自分のノートパソコンや資料を持って社内の好きな場所で作業できるワークスタイルです。わかりやすい例では、図書館やカフェのように、たまたま空いている席を使うというイメージとなります。
好きな場所で仕事ができますが、フリーアドレスはあくまでも社内に限ったスペースで、働く場所はオフィスに限られるので、毎日同じ勤務先に出社しなければなりません。しかし、ABWの場合は、社内に留まらず、自宅・カフェ・シェアオフィスなど自由な場所で働くワークスタイルです。オフィス以外で仕事をする際は、通勤が不要になります。
ABWを導入しやすい職種とは?
普段から在籍率が低い営業職や企画職は、ABWにマッチしやすい職種です。現在、リモートワークが成立している職種も導入しやすいでしょう。また、在籍率が高くても、編集者、システムエンジニア、プログラマー、デザイナーなどパソコンがあれば業務ができる職種もABWに向いています。
一方で、専用の機材が必要な研究や製造などの職種はABWに向いていません。ノートパソコンでは対応できないハイスペックなパソコンを使用するエンジニアなども難しいでしょう。また、個人情報や経営情報を取り扱うバックオフィス系の職種もABWには向いていない職種です。
ABW導入のメリット
ABWを導入することによって、企業や従業員が得られる5つのメリットをご紹介します。
従業員のモチベーション向上
「連休後は会社に行きたくない」「月曜日が憂鬱」など、オフィスワーカーは働く場所や曜日によってはマイナスのイメージを持つことが多い傾向にあります。しかし、ABWは働く場所や時間が限られていないため、気分が上がらないときは自宅で仕事をする、馴染みのカフェで打ち合わせをするなどの選択も可能です。
プライベートの用事や家族との予定も立てやすくなるため、従業員のストレスが溜まりにくくなり、モチベーションアップが狙えます。通院や育児・介護などで、今まで休職するか退職するかの選択しかなかったという人でも、働きやすくなるでしょう。ABWによって、通勤時間を削減することも可能です。今までより時間を効率良く使うことができるようになり、従業員の生活スタイルに合った働き方ができるようになります。
コミュニケーションの活性化
毎日顔を突き合わせていると、どうしても相手の嫌な部分や苦手な部分が見えてしまうことがあります。しかし、必要なときに必要なだけコミュニケーションを取れば、多少の嫌な部分も目をつぶることができるという人は多いのではないでしょうか。
また、いつも同じ場所や同じ会議室でアイデアを出し合っても、新たな着眼点や着想にたどり着かないこともあります。ABWの場合、打ち合わせの際は、内容に応じてオフィスやカフェなど自由に場所が選べます。リラックスした雰囲気の中でアイデアを持ち寄れば、普段出てこないような新たなアイデアが生まれるかもしれません。数人で打ち合わせをする際に、誰もがオフィスから遠い場所に住んでいて、自宅近くで打ち合わせした方が良い場合は、近くのシェアオフィスなどで打ち合わせすることも可能です。
ABWを導入している企業は、社内もフリーアドレスであることが多いので、違うメンバーと席を共にし、部署を超えたコミュニケーションを図ることもできます。
オフィスコストの削減
一般的なオフィスの場合、全ての従業員が入るオフィススペースを用意し、一人につき1台ずつデスクやチェアなどの家具を用意しなければなりません。そのほかにも、オフィス家具や機器、応接室や会議室、水道光熱費、備品など、さまざまコストが掛かります。ABWを導入すれば、これまでに掛かっていたコストを削減できるだけではなく、従業員の通勤費やオフィスの清掃費などの見えない経費も削減することが可能です。さらに、必然的にペーパーレス化が進むため、プリンタやコピー機の購入・リース代や印刷コストカットも期待できます。
生産性が向上する
ABWでは、仕事内容によって自由に場所と時間を選べます。集中したいときはオフィスで、リラックスしながら新たな構想を練りたい場合はカフェでなど、内容や状況に応じて環境を選ぶことで生産性の向上が期待できます。勤務先が自宅から遠い場合は、朝の通勤ラッシュで疲れ果てた状態で仕事をスタートしなければなりません。しかし、ABWなら自分の都合によって自由に場所と時間が選択できるため、パフォーマンスの良さも発揮できるでしょう。
優秀な人材の確保
優秀な人材であっても、家庭の事情や健康上の問題で退職せざるを得ないケースがあります。しかし、ABWなら個人の事情に合った働き方が可能になるため、退職者が減り、従業員の定着率がアップします。優秀な人材が転職を考えている場合でも、働きやすさを考慮して思いとどまることもあるかもしれません。また、職場で感じるストレスが減ることによって、従業員の健康やモチベーションにも大きな影響を与え、それぞれのパフォーマンスが発揮しやすい職場になるでしょう。
さらに、ABWを導入することによって、採用希望者の増加も狙えます。求職者にとって、働きやすさや自由度の高さは欠かせない条件の一つです。プライベートやライフイベントとの両立がしやすい職場は魅力的です。遠方に住んでいる、子どもが小さいなどの理由で今まで応募できなかった人でも前向きに検討しやすくなります。
ABWのデメリット
メリットがたくさんあるABWですが、もちろんデメリットもいくつかあります。こちらではABWを導入するにあたって懸念される2つのデメリットについて解説します。
勤怠管理や評価体制の見直しが必要になる
ABWはオフィス以外で働くことが多くなるので、オフィスで働いていたときのように一律の勤怠管理ができなくなります。環境を整えるのと同時に、勤怠管理のシステムや仕組みも見直さなければなりません。また、働きぶりを身近で確認することも難しく、正当な評価を下すのが困難になります。正当な評価を行うためにも、成果を元にするなどの新たな評価制度を構築していくことが必要です。ABWを導入する際には、勤怠管理や評価体制の見直しが必要になりますが、それと同時に従業員の不満が出ないように分かりやすい仕組みづくりや丁寧な説明も必要になります。
セキュリティ対策への整備が必要になる
社外で仕事をするときは、セキュリティに対してさまざまなリスクがあります。PC、資料、USB、業務ツールなどの置き忘れ・紛失・盗難など物質的なセキュリティリスクから、フリーWi-Fiを使用したことによる情報の漏洩、第三者から画面を見られる、打ち合わせ中の音声を録音されるなどのセキュリティリスクもあります。
オフィス以外で仕事をする場合は、使用するデバイスに制限を掛ける、セキュリティソフトを支給するなどの対策を行わなければなりません。それと同時に、機密情報の取り扱いや情報漏洩の扱いについても対策講座を実践するなどの対策を行い、従業員の共通認識を高めておく必要があります。さらに従業員一人ひとりのリテラシー向上へ向けた取り組みを行うことが大切です。
ABW導入の手順
こちらでは実際にABWを導入する際の手順についてご紹介します。
職場・オフィスの状況を調査する
まずは従業員が働き方やオフィスに対してどのように考えているのか、課題や要望があるのかなどの状況を調査しなければなりません。会社全体のコストを優先して入念な調査を行わずに強引に推し進めてしまうと、費用を掛けてABWを導入しても、結局誰もがいつもの席で仕事をしているという状況になってしまいます。
企業や従業員の課題や要望がABWによって解決するのか、現状よりさらに良くなるのかを検討することも必要です。場合によっては、ABWでなくても解決できてしまうこともあります。ABWが形だけのものにならないように慎重に調査をすることが重要です。現状をしっかり調査し、ABWに対して期待する声が多い場合や、従業員の働きやすさが向上するようであれば、具体的な計画を立てていきます。
従業員の要望を積極的に取り入れるのは良いことですが、実現可能なものと不可能なものが当然出てきます。オフィス環境やIT環境、企業理念や社内ルール、勤怠管理や評価体制、費用などを考慮しながら、実現可能なものと不可能なものに振り分けていき、どこまでABWで解決していけるかを十分に検討していきましょう。
ABW導入のレイアウトを考える
ABWを導入すると、現在使っているオフィスのレイアウトも変更しなければなりません。多くの人が社外で仕事をするようになった場合、現在のレイアウトではスペースはもちろんのことデスクや椅子、固定電話などが大量に余ってしまいます。しかし、ABWが初めての場合は、具体的に何をどのように検討したらいいか分からない場合もあるでしょう。まずは、実際にABWを実践しているオフィスを見学したり、ABW化した企業の事例を調べたりすることから始めます。
ABWを導入する際は、単にスペースを削減し、家具の配置を整えるだけではなく、ABW型の働き方に対応した「個人スペース」「打ち合わせスペース」「来客スペース」「休憩スペース」など、新たなスペースを設ける必要があります。以下のような内容をチェックしながら、新たなレイアウトを考えていく必要があります。
・スペースごとの役割
・企業としての目的は果たせるか
・従業員からの課題や要望に応えられているか
・増員に耐えられるか
・今後の事業展開に対応できるか
・セキュリティは万全か
レイアウトが確定し、機材の搬入や電源や動線の確保が行われると簡単に変更はできません。ABW導入前には、レイアウトを考える期間を十分に取り、予算内でどのように最適化していくかを検討していきましょう。必要であれば、オフィスレイアウトの専門家に相談するのもおすすめです。
シェアオフィスを活用してABWを導入する
企業によっては、従業員のほとんどが社外に居る割合の方が多い、会議室や応接室はめったに使わないというケースがでてきます。大幅なスペースの削減をしたいけれど、仕事内容によってはワーキングスペースが必要になるケースや会議を行う必要性も出てくるので、スペースを削る決断できないこともあるでしょう。しかし、月に数度か年に数度かのために、余分なスペースを確保しておくのは賃料が無駄になってしまいます。
そこで、おすすめしたいのがシェアオフィスの活用です。リモートワークの拡大により、現在シェアオフィスは続々と増えています。完全個室タイプやコワーキングスペースなどの選択ができたり、専用固定席や会議を行えたりするような広めの個室を完備しているシェアオフィスもあります。オフィスか自宅か従業員が個人で選択した場所かという考え方ではなく、従業員が共通して気兼ねなく利用できるシェアオフィスを活用するのもおすすめです。
まとめ
今回は、オランダで誕生した注目のワークスタイル「ABW」についてご紹介しました。日本ではまだまだ認知度の低いABWですが、意外と導入している企業も多く、新たなワークスタイルとして注目されています。ご紹介したように、いくつかデメリットはありますが、企業側にとっても従業員側にとってもメリットが多いワークスタイルです。社内の問題や課題を解決するためにも、ABWの導入を検討し、シェアオフィスなどを上手に活用してみましょう。