PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは?|その役割や導入メリットを解説
2022年10月4日
プロジェクトなどに参加する際に「PM」「PMO」などの言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、それぞれの意味や違いについて、よくわからないという人もいるかもしれません。そこで、PM、PMOのそれぞれの意味や役割について解説します。また、近年注目されているPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)について、特徴や役割、メリット・デメリットなどを詳しくご紹介していきます。
PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とは?
大規模な開発プロジェクトなどが行われる際には、プロジェクト内に複数のチームがいくつも立ち並びます。それらを横断的に支援するための部門や構造システムを「PMO」といいます。PMOとは「Project Management Office」の頭文字を取った用語です。日本語では「プロジェクトマネジメントオフィス」と呼ばれます。チームごとの進捗、品質管理、労務管理などを行うのがPMOの主な仕事です。大規模な開発プロジェクトの場合、PMOはプロジェクト内に複数設置されることもあります。しかし、全てのプロジェクトにおいて、必ずしもPMOが設置されるというわけではありません。PMOは間接部門で、目に見える利益を生まないため、社員から人員を集めるのが難しい場合はPMOの派遣サービスに依頼することもあります。
PMとの違い
PMは「Project Manager」の頭文字を取った用語です。日本語では「プロジェクトマネージャー」と呼ばれ、プロジェクトの総責任者を意味します。PMは、プロジェクト全体のマネジメントを行うのが役割です。しかし、プロジェクトが大きければ大きいほど、PMが一人で全ての工程を管理することが難しく、プロジェクト全体の進捗管理や品質管理を把握できません。そこで、PMOはPMをサポートする役割を行います。PMOは、プロジェクトオーナーであるクライアント企業直属の組織として設置されることもあります。
PMOが担う役割は?
こちらでは、PMとPMOが担う役割の違いについて、もう少し細かく解説していきます。
主にプロジェクトのマネジメントを行うのはPM
PMがプロジェクトの総責任者であることは先に説明しましたが、総責任者とはプロジェクト全体のマネジメントを行います。PMがまず始めに行うことは、プロジェクトの目的を設定することです。プロジェクトが進むにつれて目的から逸れてしまったり内容がぶれそうになったりした場合は、PMが軌道修正を行います。プロジェクトを進めるために、プロジェクトメンバーを任命するのもPMの仕事です。メンバーの得意分野やコミュニケーション能力を見極め、チームとして最良のパフォーマンスを発揮できるようなチームを結成します。
PMの最も重要な役割はプロジェクトの管理です。プロジェクトが予定通りに進んでいるか、予算内に納まっているか、問題は起こっていないかなどを常にチェックします。PMはプロジェクト全体を管理しなければならないので、高度な知識が必要です。また、多くの人と関わるため、コミュニケーション能力やマネジメント能力も必要となります。PMは、プロジェクトの成功を握る重要な存在です。
PMのパフォーマンス発揮を支援するPMO
PMOは、PMが最大のパフォーマンスを発揮できるようにPMをサポートするのが主な役割です。PMは、プロジェクトに関わる重要な意思決定を常に行います。しかし、実務も多いため、プロジェクトの規模が大きい場合や関わる人数が多いほど、本来の業務である意思決定に支障をきたします。
PMOは、PMの負担が少しでも軽くなるように、PMが意思決定に集中できる体制を整えていきます。ただし、単にPMの作業量を減らすのが目的ではありません。PMOはプロフェッショナルな補佐役として、作業の質もクオリティの高いものを提供します。PMが意思決定しやすいように、プロジェクトの現状をスピーディーに可視化してPMに報告します。
PMOの仕事内容・役割
PMOは、プロジェクトのスケジュール管理をはじめ、開発実施手順の取り決めや作業のサポートなど、多くの仕事をこなさなくてはなりません。そこで、大まかに役割を決め、それぞれが担当に合った業務を行っていきます。こちらでは、PMOの役割別の仕事内容について、詳しく解説していきます。
マネージャー
マネージャーはPMOメンバーのマネジメント業務全般を行う、PMOのリーダー的存在です。PMOの戦略、計画の策定、予算管理などのほか、メンバーの勤怠・稼動管理、教育など業務範囲が広く、内容も多岐にわたります。PMOのメンバーの業務がスムーズに進むために、PMO全体を管理するのが主な役割です。複数のPMOが存在する場合は、マネージャー同士が連携してPMを補佐していきます。プロジェクトパフォーマンスの安定化を図るため、時にはPMへ提言したり、PMとプロジェクトオーナー(クライアント)の間に立ったりして間を取り持つこともあります。
エキスパート(マーケティング)
エキスパートは、プロジェクトに関わる業務の作業プロセスやルールの標準化を図るため、アドミニストレーターが収集した情報を分析し、仕組みづくりや戦略を練るのが主な役割です。例えばPMO内で異なるソフトウェアを使ったり、ドキュメントの基準が異なったりすると混乱を招いてしまいます。そこで、エキスパートがプロジェクトに必要なソフトウェアの選定やドキュメント基準の策定なども行い、進捗と品質を安定させます。エキスパートは、PMO内で幅広い業務を取り扱うため、経験やスキルが必要です。事務的なスキルはもちろんのことエンジニアとしても豊富な知識と経験が求められます。
アドミニストレーター(事務)
アドミニストレーターは「PMO事務」と呼ばれることもあり、プロジェクトで発生する管理業務や庶務的業務を行うPMO内の事務担当です。日程調整、情報管理、書類作成、外注管理、人事労務管理、経費管理など、プロジェクト内の一般的な事務処理を行います。一つひとつの業務は小さなものでも、どれか一つが滞ってはプロジェクトの進行を妨げるので、重要な役割です。PMO内の各チームの進捗状況を取りまとめることもあります。業務が円滑に進むように、マネージャーやエキスパートのサポートを行うのも役割のひとつであり、多種多様な業務依頼にもスムーズに応えていくため、臨機応変な対応を求められることもあります。
PMOの役割と導入のメリット、デメリット
PMOを導入するには、メリット・デメリットがあります。PMOの導入で何がどのように変わるのか、それぞれの内容を確認し、プロジェクトに必要かどうかを見極めるのが大切です。
PMO導入のメリット
PMがいれば、PMOは必要ないのではないかと考えられることはあるでしょう。しかし、PMOを導入することによって、以下のようにさまざまなメリットをもたらします。
PMの負担を軽減できる
通常、PMは一人のため、どんなに優れている人であっても業務量に限界があります。数百人ものメンバーに及ぶような大規模なプロジェクトの場合は、特に負担が大きく、一人で管理するのは至難の業です。万が一、PMが急な病気や事故で離脱してしまった場合、プロジェクト自体がストップしてしまうこともあります。PMOを導入すれば、PMの負担を軽減することによって意思決定速度が上がるだけではなく、それぞれのチームの細かいケアができるようになります。PMが一人で管理するときよりも、プロジェクト全体の質が向上するでしょう。さらに、ナレッジが積み上げられ、組織にノウハウが残る点もメリットといえます。
業務効率が上がる
PMOが作業基盤を準備することで、PMが一人でリソース確保やその調達を行うよりもスピーディーに行えます。PMOでは、状況を把握するために、進捗管理・予算管理・リスク管理など、さまざまな管理プロセスを可視化しているので、問題点が見つかりやすく、結果的に業務効率もアップします。さらに、プロジェクトを円滑に進めるためのルール作りや定着化を図るため、非効率な業務が生まれにくいという点もメリットです。また、PMをサポートする人が複数人居るため、情報を共有しやすく、作業工程や技法の効率化も期待できます。
プロジェクトの質が上がる</h4>
PMの負担が減るため、PM自身が効率的に仕事を行うことが可能となり、意思決定がスムーズになります。細かい部分にまで目が届くようになるので、プロジェクト全体の質も高くなるでしょう。PM個人に頼っていたマネジメントをPMOがチームで行うことによって、個々のスキルアップも期待できます。また、企業には、社風や役割によってしがらみがあるケースもあります。PMに対して直接意見をしにくい場合でも、PMOを通してなら言えることもあるでしょう。結果的に、各人が意見を出しやすくなり、プロジェクト全体の質が上がります。
PMO導入のデメリット
PMOを導入することによって得られるメリットが多い一方で、デメリットが発生することもあります。
プロジェクトのまとまりがなくなる
プロジェクト内に複数のPMOを置く場合、それぞれの責任感からか、PMとPMO、PMO同士、PMOと現場などで意見の食い違いを起こすことがあります。対立が起こらないよう、PMOの各マネージャーが各部門と交流を持ちながら、信頼関係を築き合い、業務を円滑に進めていくことが大切です。そのためにも、PMOのマネージャーのコミュニケーション能力が欠かせないものになってくるため、人選が難しくなります。また、PMOスタッフのスキルが高すぎて、PMの存在が薄くなってしまうこともデメリットの一つです。ときには、業務の範囲を超えて、PMの役割が曖昧になってしまうこともあるでしょう。プロジェクトの中心はあくまでもPMであるということを忘れず、PMOに依存しすぎない体制づくりのため、役割分担をしっかり行っておく必要があります。
コミュニケーション不足になることがある
プロジェクトが大きければ大きいほど、PM・PMO・現場のそれぞれの立場によって、関係が希薄になってしまうことがあります。コミュニケーションが取れていない場合は、相手の立場を思いやることができず、つい自分の立場で業務を実行してしまいがちです。意見の対立も起こりやすくなるため、意思疎通を図り、プロジェクトが円滑に進むように、違う立場の人のことも意識し続ける必要があります。
PMOに求められるスキル
PMOの内容や特徴、メリット・デメリットについて理解し、PMOを導入してみようという考えに至った場合、どのような人選を行ったらよいか迷うこともあるでしょう。あるいは、今後PMOに選出されるために、自分のスキルを伸ばしたいという場合もあります。こちらでは、一般的にPMOに求められる3つのスキルについてご紹介します。
マネジメントスキル
マネジメントスキルは、人・モノ・費用・時間・事業全体などの対象物を管理するためのスキルです。プロジェクトの統括・管理を行う役割を担うPMOに欠かせないスキルといってもよいでしょう。自分や自分のチームのみのことだけ考えるのではなく、プロジェクト全体を俯瞰し、PMを補助する役割をこなせる人が求められます。トラブルが発生したときにも、慌てることなく冷静な対処ができる人も重宝されるでしょう。
コミュニケーションスキル
先にもご紹介したとおり、PMOを導入するとコミュニケーション不足になることがデメリットとなります。しかし、コミュニケーションスキルが高い人が居ると、周りの人も安心して業務を任せられます。特にマネージャーは、高いコミュニケーション能力が必要です。さらに、PMOでは、人事・教育、進捗管理など人と関わることが多く、現場へのヒアリングなども行わなければなりません。人当たりが良く、円滑なコミュニケーションを図れる人は、PMOに向いている人材といえるでしょう。
情報処理能力
情報処理能力の高い人は、以下のような特徴があります。
・全体像を把握するのに長けている
・情報の取捨選択が上手い
・アイテムを使いこなすのが上手く処理速度が速い
・物事をパターン化して分類する能力が高い
情報処理能力の高い人は、多くの情報の中から必要な情報を的確に選択し、わかりやすく分類できます。さらに、ブラインドタッチでパソコンを扱う、ショートカットキーを使う、便利なツールを効率良く使うなど、時間を無駄にしません。普段から業務に関わる勉強を怠らない人、常に自分のスキルアップを目指している人、情報のアップデートを行っている人はPMOに求められる人材となるでしょう。
まとめ
PMとPMOそれぞれの役割や違いについて、簡単に解説しました。PMOには多くのメリットがありますが、時にはプロジェクトのまとまりやコミュニケーション不足に陥ることもあります。プロジェクトに対して、PMOを導入する際には、十分な検討が必要です。また、PMOの仕事は多岐にわたり、多くの業務をこなさなくてはなりません。メンバーを選出する際は、マネジメントスキル、コミュニケーションスキル、情報処理能力などが高いかどうかなどのチェックも必要になります。PMOを導入する際は、こちらで紹介したような内容を理解しておくとよいでしょう。