フレキシブルオフィスが増加している理由とは?企業が活用するメリットから解説

フレキシブルオフィスとは、シェアオフィスやレンタルオフィスなど柔軟・臨機応変に利用できるオフィスの総称です。フレキシブルオフィスが増加している理由や活用事例をご紹介します。

それに加え、今後フレキシブルオフィスの利用が新興企業にとってトレンドになるかどうか、注目ポイントとともに解説いたします。

フレキシブルオフィスはなぜ増加しているのか

フレキシブルオフィス数が増加しています。ザイマックス総研の「フレキシブルオフィス市場調査2022」によると、2022年1月時点の東京23区内のフレキシブルオフィスは1,080拠点、21.4万坪です。2022年と2017年を比較すれば、拠点数も面積も4倍以上となっています。

フレキシブルオフィスが増加している理由として、以下の事情が挙げられます。

  • リモートワークの増加
  • 働き方改革
  • 起業数の増加

詳しく見ていきましょう。

リモートワークの増加

以前よりリモートワークを推進する動きはありましたが、2020年の新型コロナ感染症対策を機に、多くの企業でリモートワークが取り入れられました。自宅をワークスペースとして仕事場を構える人も多い一方、自宅では理想的な環境や設備が整っていないため、働きにくいと感じる人もいます。

働き方改革

働き方改革の一環として、フレキシブルオフィスの利用を企業側から推進している例もあります。

  • 通勤時間の短縮
  • 居住地に関わらず人材を採用できる
  • 営業先から帰社せずに働ける
  • 併設された託児施設の活用

自宅近くのフレキシブルオフィスで仕事をすることで通勤時間の短縮ができるだけでなく、居住地に関わらず人材採用ができるようになります。従業員は会社の近くに住む必要がなくなるだけでなく、企業としても交通費の支給が不要になり、それまで埋もれていた優秀な人材を雇えます。

移動の多い営業担当者も、帰社することなくフレキシブルオフィスを使って業務を進められるので、生産性の向上が期待できます。

本社オフィスに託児施設を併設している企業もありますが、子連れで満員電車に乗って通勤するのは負担だと感じている人も多くいます。自宅近くのフレキシブルオフィスに託児施設があれば、通勤時間を短縮できるだけでなく、子供の近くにいることができるため、心理的な安心感を従業員に与えられます。

都心のオフィスまで毎日通勤せねばならない環境では、実現しにくい働き方改革をフレキシブルオフィスを介して企業が実践しているのです。

起業数の増加

株式会社東京商工リサーチによる「2021年「全国新設法人動向」調査」によると、2021年の1月から12月の間に新設された法人は約14.5万社で、前年比は10.1%増加となりました。

起業したばかりの会社にとって、オフィスを構えるための初期投資は大きな負担になります。フレキシブルオフィスなら、設備は既に整っているので入居後すぐに業務を始められます。さらに、従業員数の増減に対応しやすく、ビジネス環境が変化しやすい新設企業が柔軟に使えます。

フレキシブルオフィスを活用するメリット

フレキシブルオフィスにはいくつものメリットがあり、活用している企業が増加しています。

柔軟な契約

フレキシブルオフィスは柔軟な契約ができる点が魅力です。

  • 複数のプランがある
  • 契約の規模を変更するのも容易
  • 短期間の契約も可能

契約プランは選択可で、複数人で専用の個室を使えるプランや、空席があればデスクを利用できるプランなど、さまざまなタイプがあります。利用する人が使いやすいプランを選ぶことができ、コストを最小限に抑えることが可能です。

また、従業員数が増えたのでオフィスの規模を大きくしたいという希望にも随時対応してくれます。一般の賃貸であれば、オフィス探し、契約、入居のための工事、引っ越し、旧オフィスの原状回復、等々のプロセスを踏む必要があります。

しかし、フレキシブルオフィスであれば契約を変更するだけでオフィス規模の変更が可能です。

フレキシブルオフィスでは短期間の契約も可能である一方、尋常の賃貸オフィスでは契約期間が2年以上であることが一般的です。

フレキシブルオフィスでは、1ヶ月のみ借りることなども可能で、時間貸しをしているオフィスも含めれば、最短1時間から借りることができます。利用者にあった柔軟な契約ができるのは、コスト削減に直結しやすくメリットと言えます。

初期費用の安さ

一般的な賃貸オフィスに比べ初期費用は格段に安く済みます。賃貸オフィスで必要な初期費用はおおよそ以下の通り。

  • 敷金・礼金(賃料の6~12ヶ月分程度)
  • 入居工事費
    • 内装・家具
    • 電気工事
    • 電話やインターネットなどのネットワーク
    • 空調
  • 仲介手数料
  • 火災保険料

入居のための工事が必要になるので、業務を新オフィスに移転する2〜3ヶ月前から賃料が発生します。

フレキシブルオフィスでは、次のような初期費用がかかります。

  • 敷金・礼金(賃料の1~3ヶ月分程度)
  • 仲介手数料

内装や一般的な設備は整っているため、初期費用はフレキシブルオフィスの方が圧倒的に安く抑えられます。

オフィス賃料の安さ

フレキシブルオフィスでは、賃貸オフィスと比べてオフィス賃料も安く済ませることもできます。

急な人員の増加に対応するために、あらかじめ広い場所を借りておく必要もありません。フレキシブルオフィスでは共有スペースに、無料で利用できるラウンジがある場合も多くあります。

ミーティングスペースを追加オプションで借りられるフレキシブルオフィスもあり、自社で広いミーティングスペースを確保しておく必要もなく、利用の手続きも簡単で便利です。

フレキシブルオフィスでは水道光熱費が賃料に含まれていることも多く、固定費として計算できるのもメリットです。

利用人数や利用目的に適しているか

フレキシブルオフィスでは、利用人数や利用目的に適したオフィスを使える点もメリットとして挙げられます。

営業員が多い部署では、日常的に空席が目立つ場合もあります。社内で業務を進める人数に合わせてデスク数を調節し、空席ならどこでも利用できるフリーアドレス制を導入すればスペースを有効活用できます。

また、個人事業主が住所のみを使用するバーチャルオフィスにも転用可能で、登記や郵送物の受け取りに使用することで、業務とプライベートを自宅と職場で分ける目的で使えるのもメリットです。

フレキシブルオフィスの活用事例

フレキシブルオフィスの活用方法は多種多様です。事例をいくつかご紹介します。

スタートアップ企業

新しく事業を興し、短期間での成長を目標にしているスタートアップ企業は、目まぐるしく変容し続けながら、ビジネスモデルを確立せねばなりません。

少人数からのスタートならば尚更、スピード感を持って事業を進めなければビジネス環境で生き残れません。

 初期費用を抑えて改行開業できる

スタートアップ企業にとって、フレキシブルオフィスは開業時の初期費用を抑えられるのがメリットです。

インターネットやプリンターなどの設備が充実していて、内装や家具も整っており、すぐに働き始めることができます。スピード感を重視するスタートアップ企業の考え方にも合っています。

また、フレキシブルオフィスはアクセスしやすい立地にあることが多く、取引先への訪問や顧客の来社にも適しているオフィスを、安く借りられるのは見過ごせない長所。

加えて、会社の急成長を見越して広いオフィスを借りる必要もなく、現状に即した契約を、成長速度に合わせて変更できるのも、初期費用を抑えられる要因です。

大企業のサテライトオフィス

大企業では、従業員が通勤しやすい場所に数人規模で働くことができる小さなサテライトオフィスを設置していることがあります。社員の通勤時間の短縮や、営業員が出先から本社に帰ることなく業務を進めさせる等の目的の下、これらのサテライトオフィスは設置されています。

什器や通信設備を導入する必要がない

企業が自社でサテライトオフィスを複数設置するとなると、内装や什器、通信設備の導入など多額の初期投資が必要になります。備品の管理なども考えると、望み通り備品をすべて設置するのは難しいでしょう。

しかし、フレキシブルオフィスならすぐに使える状態のオフィスを使用人数に合わせて借りることができるので、初期投資は安く済みます。

リモートワークの拠点

自宅をリモートワークの拠点にすると、仕事をする環境が最適化されておらず、不必要なストレスが生じることがあります。

またデスクや椅子、プリンターなどの機器の購入が必要であったり、インターネットの通信速度が遅いために仕事が捗らないことなどがあります。家族がいるため、会議中生活音が漏れてしまう場合もあるでしょう。

以上の事情などから、フレキシブルオフィスが「働きやすい環境が整ったリモートワークの拠点」として導入される事例が増加しています。

社員の満足度、生産性の向上

リモートワーク拠点としてのフレキシブルオフィスは、仕事に集中できるため社員の満足度が高く、生産性の向上が見込めます。もちろん、自宅でできる業務は自宅で、会議など落ち着いた環境が必要な場合はフレキシブルオフィスを利用するという方法も可能です。

社員がその時々に合わせた働き方を自分で選べるのもメリットです。

フレキシブルオフィスはこれからの働き方の常識になりえるのか

今後、フレキシブルオフィスの活用はビジネスのトレンドになるのか、利用者が増加するのかを、考えていきましょう。

世界のフレキシブルオフィスのトレンド

世界では、フレキシブルオフィスが日本よりも活用されています。

ザイマックス総研の「【WORKTREND⑮】グローバル:英国のフレックスオフィスの未来予測」によると、イギリスではコロナ禍以前2018年〜2019年の時点でオフィス市場の5%はフレキシブルオフィスが占めています。

2023年までにはフレキシブルオフィスが20%を占めると予想されており、働きやすい場所を従業員が選ぶ社会に変わりつつあると考えられます。日本でも働き方改革が進み、従業員が働き方や場所を選ぶようになると、フレキシブルオフィスの需要は増加するでしょう。

リモートワークやサテライトオフィスの今後

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大により、急速にリモートワークが進みました。その後、感染状況も落ち着いたので、最大56%もの企業が実施していたリモートワークの導入は20%程度に下がっています。

しかし、リモートワークは社員の満足度が高いこともあり、全ての企業が完全に出社する働き方に戻すことはないでしょう。

また、大企業が中心に使用しているサテライトオフィスは、感染症の流行前から導入されていました。企業にとっては、サテライトオフィスは育児や介護で退社する社員を減らしたり、遠方に住む優秀な人材を集めるための施策。今後も変わらず運用されるでしょう。

付加価値のあるフレキシブルオフィスの利用

業種や業態にあったフレキシブルオフィスを使いたいというユーザーからの声を受け、付加価値のあるオフィスが増加しています。一例を紹介します。

  • インターネットの速度が早い
  • ミーティングスペースが充実
  • 受付や秘書業務を依頼できる
  • 託児施設あり

容量の多いデータを扱う企業にとって、インターネットの速度は重要です。Web会議、電話会議も含め打ち合わせが多い企業ならば、ミーティングスペースが充実しているオフィスを使いたいと考えるでしょう。

受付や秘書業務を依頼できれば、社員はコア業務に集中することが可能です。フレキシブルオフィス内に託児施設を併設することにより、子供を預ける保育園が見つからないために社会復帰が難しいという課題を解消できます。

フレキシブルオフィスの利用がDXも促進

企業がフレキシブルオフィスを活用できるかどうかは、DXが進められるかどうかに関わります。

DXとは単にペーパーレスを進めデジタル化するということではありません。会社の仕組みや業務プロセス、ビジネス戦略も含めデジタル化し、組織全体をデジタルで運用しやすいように変更することを指します。

フレキシブルオフィスでは多くの書類を保存することはできないため、クラウドツールやサービスを活用してデータで保存するようになります。離れた場所で働く社員同士では、クラウドサービスやビジネスチャットを利用して情報を共有し業務を進められます。

フレキシブルオフィスを活用するには、デジタル環境で働くことを前提とした組織づくりを進めることになり、結果、DXの促進も期待できるのです。

まとめ

フレキシブルオフィスの増加の理由は、リモートワークや働き方改革、起業数の増加等々が主な原因として考えられます。フレキシブルオフィスでは、企業の状態に合わせた柔軟な契約ができるため、賃料を安くでき、設備が整っているので初期費用も抑えられるのがメリット。また、利用人数や目的に合わせて契約もできます。

フレキシブルオフィスは増加傾向にあり、今後も活用機会が広がっていくことが予想されます。2030年までに世界オフィス市場の20%をフレキシブルオフィスが占めるだろうという予測もあります。リモートワークやサテライトオフィスの利用は社員の満足度が高く、付加価値のあるフレキシブルオフィスを使用することでより働きやすい環境を得ることも可能です。

フレキシブルオフィスの活用に伴ってDXを促進できることもあり、フレキシブルオフィスの利用がトレンドになる業種や業態も出てくることでしょう。

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