オフィスのフリーアドレスにはどんなメリットがある?直近の傾向と導入の際の注意点を解説
2023年1月12日
オフィスをフリーアドレスにすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。多くの企業がフリーアドレスを導入する理由とともにご紹介します。導入時に注意したい点や具体的な導入手順、フリーアドレスを活用したオフィスの事例などを参考に、自社に合ったオフィスの形を考えてみましょう。
目次
フリーアドレスとは?
フリーアドレスとは、個人専用の固定席ではなく、空いているデスクを誰でも使えるというオフィスの形です。デスクの形は1人1台のもの以外に長机や大きな円卓を利用することもあります。毎日違う場所、異なる隣人と仕事をするのが特徴です。
フリーアドレスの変遷
フリーアドレスは1987年に清水建設株式会社が世界で初めて導入しました。目的はOA機器などの増加によるスペース不足をコストをかけずに解消することです。外回りの営業などによる空席を効率的に使おうと考え、90年代から2000年代にかけて各企業が取り入れました。
しかし、この頃は紙の資料が多く、電話は携帯だけでなく固定電話も使用していました。コンピュータなどの機器も大型だったため、状況に合わせて席を変えることが難しく定着しませんでした。この時期は「フリーアドレス1.0」と呼ばれています。
現在は「フリーアドレス2.0」と呼ばれ、ペーパーレスや電話やパソコンの小型化・モバイル化が進みました。また郵便物が以前に比べて減っており、メールやチャットといった連絡手段も増えたため、取り入れやすくなっています。
フリーアドレスの導入率は60%以上!?
フリーアドレスを活用している企業は60%以上もあると言われています。企業の半分以上が何らかの形で取り入れているということです。以前と比べて取り入れやすくなったとはいえ、なぜオフィススタイルを変更する企業が増えたのかご紹介します。
多くの企業がフリーアドレスを導入する理由
「フリーアドレス2.0」では働き方改革の一環として活用を考える企業が多くあります。テレワークと相性が良く、社員全員の専用の席を用意せずに、出社が必要な人数に合わせて座席数を調節できるためです。
またペーパーレス促進やモバイル化、クラウド化もきっかけになっています。フリーアドレス1.0では大量の紙や大きな機器が課題となって定着しませんでした。
ペーパーレスが進み紙の資料が減り、必要な情報やソフトはクラウドで利用できるようになったため、定着させやすくなりました。
フリーアドレスを活用するメリット
働き方改革を進める目的のほかにメリットもあります。次のような点を改善したい、推進したいと考えている企業にはオフィスのフリーアドレスはおすすめです。
コミュニケーションの活性化
コミュニケーションが活性化するメリットがあります。従来は固定席だったため同じ部署、同じチームの人など席が近い人との連携が取りやすい環境でした。
フリーアドレスでは部署やチーム以外の従業員とコミュニケーションが取りやすくなり、さまざまな人との会話が弾みます。いろいろな人と話すことで新しいアイデアや、今までにはなかったコラボレーションが生まれます。
オフィススペースの削減
フリーアドレス1.0の時期の導入目的にもなったように、オフィススペースの削減が実現できます。従来のスタイルでは、テレワークや外回りの人が多い部署では常に複数の専用席が空いています。
どれくらいの席を使っているかという在席率を元にデスクの数を決め、空いている席を自由に使えるようにすれば、デスクの数を削減可能です。デスクの数を大幅に減らせればオフィス賃料などのコストを下げることも期待できます。
またフリーアドレスを活用するにあたってペーパーレスが進み、社内の書類の量が減ることで書類管理用のスペース削減も期待できます。ペーパーレスが進むことで机の上に書類がたまることもなく、オフィス内の環境美化につながるという声もあります。
社員の満足度上昇
フリーアドレスが活用できれば働き方改革が進み、社員それぞれが自分に合った働き方が可能になります。また仕事内容に合わせて席を選べ、業務効率もアップします。
離れているチームや部署のメンバーとの情報共有ができるように社内の情報共有システムも変わり、従来の方法よりスムーズになります。情報共有がスムーズにできるようになり、生産性の向上に繋がります。
社員の満足度を構成する要素には次のようなものがあります。
- 企業理念や方針
- 仕事内容
- 評価
- 人間関係
- 職場環境
- 給与、福利厚生
フリーアドレスを活用すると新たな人間関係が生まれ、自分の意見を発信する機会が増えるでしょう。また社内システムの変化で職場環境も仕事内容も新しくなります。
アイデアや創造力も生まれ生産性も向上するので、仕事や環境に対する社員の満足度が上昇し、仕事へのモチベーションアップにも繋がります。
フリーアドレスを導入する際の注意点
オフィスのフリーアドレス化はメリットが大きいですが、注意が必要な点もあります。中にはフリーアドレスが合わない業務もあります。具体的には経理や管理に関するものです。これらには次のような特徴があります。
- 紙の書類の取り扱いが多い
- 物理的に物品を同時に使用する
- IT化が難しい
- 強固なセキュリティが必要
紙の書類や物品を取り扱う、IT化が難しい業務では、席が決まっていないと情報や物品の共有が行いにくいです。また強固なセキュリティが必要なものは、データや情報の共有をするために特定のネットワークを使うことがあるため、席を固定化しておいた方がよいでしょう。
合わない部署で取り入れてしまうと、業務効率が下がるので事前によく検討をします。
では向いている場合で取り入れる際に注意が必要な点をご紹介します。
集中して作業用するスペースを確保する
従来の固定席と比べて次のようなデメリットが考えられます。
- 人が集まりやすい場所がある
- 人の往来が多くなる
- コミュニケーションが活発で会話が多くなる
声や物音が大きく聞こえる状況が苦手な従業員もいます。隣の席の人がどのような作業をしているのか把握しづらいため不用意に話しかけてしまうこともあるでしょう。
このような状況は業務効率の低下に繋がります。集中して作業できるスペースを用意して効率を下げない工夫が大切です。
資料や備品の保管場所を決める
資料や備品のデスクでの管理ができなくなります。オフィススタイルを変更する前に資料や備品を保管できる場所を設置しましょう。
個人の資料や就業中の手荷物は専用のロッカーを準備するとよいです。鍵をかけられるロッカーを使用することで紛失の防止にも繋がります。
備品については社内で共有する方法もあります。保管用の棚を設け必要なときに棚から取り出し、使い終わったら戻す方法にすると少ない備品を共有できるようになり保管場所も削減できます。
フリーアドレスの導入手順
オフィススタイルを変更するなら、しっかりと準備して成功させたいものです。注意点だけでなく導入手順も確認しましょう。
フリーアドレス導入の範囲を決める
フリーアドレスははじめから全社で取り入れる必要はありません。活用しやすい部署やチームだけから順番に取り組む方法は成功しやすくおすすめです。
また複数ある活用のメリットの中から目的を定め、導入範囲を選択します。一部で活用してみて成功し、社内システムとして浸透してから、範囲を広げていきましょう。
座席数やレイアウトを決める
導入する範囲が決まったら座席数を決めます。現在、同時に何人出社しているのかという在席数を元に「座席設定率」を割り出して設置する席の数を計算します。座席設定率が80%、導入部署の社員が30人の場合は24席用意します。
テレワークや外出、会議が多いと座席設定率が低めに、毎日デスクで仕事をする人が多い部署であれば座席設定率が高めになります。
オフィスのレイアウトをする前には導入するフリーアドレスは「完全フリーアドレス」と「グループアドレス」のどちらなのかを決めます。
完全フリーアドレスは全員が自由に席を選べる方法で、グループアドレスはチームや部署などグループそれぞれにエリアを指定し、エリア内であれば席を自由に選べる方法です。
グループアドレスは導入のハードルが低く、社員が受け入れやすいのがメリットです。どちらが合っているのか社員に意見を聞きながら決めていくのもよいでしょう。
レイアウトではデスクの配置以外に個人用ロッカーやワゴン、共有備品置き場など働きやすいレイアウトと導線を考えます。集中できるスペースや打ち合わせができるコミュニケーションスペースも設置し、それぞれが干渉しあわないように工夫します。
運用上のルールを決める
レイアウトを考え進めると同時に運用上のルールも決めます。気持ち良く働くためには細かいと感じるようなものも決めておいた方がよいでしょう。
運用上のルールの例
- デスクやコミュニケーションスペースなどの予約方法
- パソコンなどの機器や情報共有ツールの使用について
- 郵便物や電話の対応方法
- 使用した座席の清掃について
- セキュリティ
ルールを決めたら、マニュアルやガイドラインを作成して社内に共有できるようにしておきます。
オフィス什器の選定
すでに決めたレイアウトやルールに合わせてオフィス什器を選びます。特にデスクはオフィスの雰囲気に大きく影響するので、目指すオフィスのイメージを考えて選びましょう。
オフィススタイルを変更する時のデスクの例
- 大型のテーブル……複数人で使え、コミュニケーションが取りやすい
- キャスター付き、連結できるタイプ……人数の増減やレイアウト変更に対応しやすい
- カフェテーブル……リラックススペースやコミュニケーションスペースに適している
スペースごとに異なる什器を使って雰囲気を変えれば、スペースの利用目的を明確にすることもできます。
社内への通達
準備が整ったら社内に通達します。重要なのは、導入目的を社員に伝え理解してもらうことです。導入目的とともに具体的な運用ルールも伝え、積極的に社内に発信をしましょう。
中には専用席がなくなることに不安を感じる人もいます。従業員へ向けて説明会を開き質疑に応答すると不安を解消しやすいです。社内への通達は早めに行い、社員が目的やルールを理解してから運用をはじめます。
取り入れた後も社員からの意見は積極的に聞き、改善や変更を加えて社員が働きやすい形を追求しましょう。
フリーアドレスの活用事例
オフィスをフリーアドレスにした活用事例をいくつか紹介します。
- テレワークが前提の活用
コロナ禍でテレワークが促進されました。テレワークで働ける環境が整ったため、出社人数を最小限に抑えオフィススペース削減を目的にフリーアドレスを活用しています。
個室やテレフォンブースなどを充実させ集約した執務エリアでそれぞれが仕事を行いやすくしました。さらに開放的なオープンエリアを新設しソファやリラックススペースを設けて、テレワークでは希薄になりがちな社員同士のコミュニケーションを活発にさせる工夫もしています。
- コミュニケーション不足解消が目的
完全な固定席による会話不足が課題となっていた企業で、コミュニケーション促進を目的として活用を決めました。
打ち合わせなどもできるボックス席や、複数人での会話が弾みやすい大きめの円形のテーブルなど、さまざまなコミュニケーションに対応できるブースを用意したので用途に合わせて使い分けることができます。
- 業務効率化の一環として活用
業務効率化を進めたいと考えていた企業で、ペーパーレスの促進のためにフリーアドレスを活用することにしました。資料を電子化したことで紙の書類が大幅に削減でき、スムーズな情報共有に繋がっています。
またデスクに紙の書類が積み上げられることがないのでオフィスの散らかった印象がなくなり、環境美化にも繋がっています。
フリーアドレスは社員の満足度向上に良い影響を与えるのか
オフィススタイルの変更が社員の満足度をアップさせられるかは以下の点がポイントになります。
- 社員が目的を理解したうえで導入している
- 働き方改革促進や生産性の向上がある
- 導入後は社員の満足度を調査し、課題の解決をしている
企業側が従業員に十分に説明をし、社員が目的を理解してから活用をはじめます。疑問や不安を取り除く努力をしていることも大切です。
また活用が進み働きやすくなった、生産性が向上したなど実感できる効果があると社員の満足度アップに繋がります。
導入後は社員の評価を調査します。満足度だけでなく社員から寄せられる課題があれば解決すると働きやすくなって満足度の向上に良い影響があるでしょう。
まとめ
オフィスのフリーアドレスとは個人専用の固定席ではなく、空いているデスクを自由に使えるというオフィスの形です。活用を考える企業は増加傾向にあり、働き方改革やコミュニケーションの活性化、オフィスの省スペースなどのメリットがあります。
オフィススタイルの変更は手順に沿って十分に準備をしてから進めることが大切です。とくに社員の理解が重要なので、導入目的の説明や不安や疑問点の解消に努めるようにしましょう。
フリーアドレスをうまく導入すれば、働き改革が進み、生産性が向上するなどのポジティブな変化があり、社員の満足度向上にきっと良い影響をもたらすはずです。