コミュニケーションを活性化させるオフィス環境とは。効果的なオフィスレイアウトもご紹介。
2023年1月13日
オフィス環境へ求めるものが、最近の日本では変わりつつあるようです。オフィス環境の改善により、コミュニケーションを活性化させる取り組みが各社で行われています。コミュニケーションの活性化をより重視したオフィスのメリットや、効果的なレイアウトの例をご紹介します。
また、シェアオフィスを利用して社内外のコミュニケーションを活性化するヒントも併せてご紹介しますので、参考にしてください。
目次
オフィスとはそもそもコミュニケーションを図る場所だった
テレワークの浸透によって、オフィスへ顔を出す機会が減った方も多いでしょう。オフィスに出社する意義が変わってきたと感じる方も多いのではないでしょうか。
株式会社月刊総務が2021年11月に行った「オフィスに関する調査」によると、オフィスで働くメリットとして「簡単な打ち合わせや質問がしやすい」と回答したのは81.1%で最も多く、次いで「雑談ができる」という回答が67.5%でした。前年に76.6%で最多だった「仕事環境(デスク・空調・備品など)が整っている」は64.6%で3位まで下がった一方、「雑談ができる」ことを重視する割合は大きく伸びています。
この数年の間に、オフィスはコミュニケーションの場としての役割がより求められるようになってきています。
参考:「オフィスに関する調査」(2021年11月『月刊総務』調べ)
日本の伝統的なオフィスが持つ機能性
そもそも、従来の日本のオフィスはどのような役割を果たしてきたのでしょうか。
日本の伝統的なオフィスは、組織としての運営がしやすい事を目的としてきた側面があります。オフィスは仕事をする環境が整っている作業場であり、部署単位で仕事を進めやすいように最適化されてきました。
それを良く表しているのが、部署ごとに島を作ってデスクを向かい合わせに配置する「島型レイアウト」です。島の端には上長のデスクがあり、部署内の社員の様子が確認できるようになっています。業務のための情報や進捗状況は、部署内のみで共有しやすい仕組みでした。
日本のオフィスはコミュニケーションに重きを置いていない?
島型レイアウトのオフィスは、同じ島の中の社員同士はコミュニケーションが取りやすく便利ですが、島が分かれている他部署とは情報交換がしづらい欠点がありました。コミュニケーションはあくまで、部署内の社員同士や上長から部下へのコミュニケーションが中心であり、自由で横断的なコミュニケーションには重きを置かれてこなかったと言えます。
また、会議室や座席周り以外の交流スペースは、喫煙所や終業後の飲み会などの場に限られていました。そのため、プライベートの時間を割かなければコミュニケーションが取りづらく、社員同士の交流が深まらないという文化が長く続いていました。
これからのオフィスに求められるもの
ここ数年はコロナ禍の影響もあって、部署単位で仕事を進めるよりも、リモートワークを含む個人作業や少人数のチーム作業を伴う機会が増えました。オフィスへ一度に出社する社員数も少なくなる傾向があります。また、部門を横断して行うプロジェクトや、社外とのコラボレーションの機会も増えています。
そうした新しい働き方に合ったオフィスには、以下のようなものが求められています。順番に見ていきましょう。
- 気軽に少人数のミーティングができる
- 1人で業務に集中できるスペースを確保する
- 組織図に依らないオフィスレイアウト
気軽に少人数のミーティングができる
さまざまな人間との協業に必要なのは、気軽に使用できるミーティングスペースです。従来型の閉鎖的な会議室だけではなく、気軽に意見交換やブレーンストーミングができるミーティングスペースを確保すると、自由な交流が生まれます。
オープンスペースにすれば使用状況が一目で分かるため、空いている時間に利用する人が増えるでしょう。情報共有がしやすいだけではなく、業務に関係のない雑談をする機会も増え、活発なコミュニケーションが促進されます。
1人で業務に集中できるスペースを確保する
オフィス環境の改善というとオープンスペースの確保に議論が向かいやすくなりますが、オープンなスペースばかりでも効率は上がりません。集中して作業を行いたい時や機密情報を扱う時には、周囲に人が居たり話しかけられたりする環境は不向きです。
コミュニケーションを取るための場所とは別に、1人で業務に集中できるスペースをきちんと確保することで、オンオフの切り替えがしやすく生産性を高めることができます。
組織図に依らないオフィスレイアウト
同じ部署に属していても、業務内容や働き方が異なるのは今後当たり前になっていきます。午前中はリモートワーク、午後から出社して別プロジェクトへ参加、など日によってもフレキシブルに変化していくスタイルになるでしょう。
業務内容や働き方が固定されていないオフィスでは、組織図通りに島を区切る形のレイアウトの意義が薄くなります。その日の業務内容や一緒に働くチームなどに応じて、自由に席を移動できるレイアウトを中心にする事で、効率を高めることができます。
コミュニケーションに重きを置いたオフィスのメリット
コミュニケーションを重視したオフィスにすると、さまざまなメリットがあります。以下の3つのメリットについて、詳細を見ていきましょう。
- 社内の別部署との連携がスムーズになる
- 新たなアイデアが生まれやすい
- コミュニケーションが活性化されることで離職率が低下する
社内の別部署との連携がスムーズになる
部署間で仕切られているかのような従来型のオフィスを刷新すると、別部署との垣根を感じる機会が少なくなります。自身の仕事に関して、別部署の社員に気軽に相談できることも増えます。他部署と横断的に行うプロジェクトでは特に威力を発揮し、プロジェクトの全体感を共有しながらスムーズに連携する事が出来るようになります。また、自身の仕事とは直接関係のない部署の仕事について知る機会が増え、社員全体の一体感が生まれやすくなります。
新たなアイデアが生まれやすい
普段は仕事に関わりのない人との交流が増えると、思いもよらない新しいアイデアが生まれやすいと言われます。異なる視点を持った人間にアドバイスを貰うことで、同じメンバーで話し合っていた時には出なかった意見が出る、という事は良くあるものです。また、開放的で気軽に使えるコミュニケーションの場が増えるとリラックスしながら話ができるため、柔軟な意見が出やすくなります。
コミュニケーションが活性化されることで離職率が低下する
コミュニケーションが円滑に取れているかどうかは、会社の離職率にも影響します。厚生労働省の「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、初めて勤務した会社を辞めた理由の2位には「人間関係がよくなかった」が挙がり、26.9%でした。コミュニケーションが活発だと人間関係を良好に保ちやすく、会社の中に自分の居場所を作りやすくなります。また、作業や仕事のストレスを孤独に抱え込むことも減り、仕事の相談や頼み事などが気兼ねなく行えるようになります。社員同士が自然に助け合える環境であれば、離職率は自然と下がっていく事でしょう。
コミュニケーションを活性化させるオフィスレイアウト例
具体的に、コミュニケーションを促すためにはどのようにレイアウトをしていけば良いのでしょうか。実際にさまざまな企業で導入され、コミュニケーションの活性化に貢献しているレイアウト方法をご紹介します。
少人数用の会議室を設置する
コミュニケーションを促すためには、思いついたときにすぐ使用できるスペースの設置が効果的です。予約が不要な少人数用の会議室を設置すると、すぐに打ち合わせができるためスピード感をもって仕事を進める事ができます。
従来の大人数用の会議室はそのまま使用しつつ、少人数用の会議室も設置することで、業務上のさまざまなシーンに対して使い分けられます。
電話用のブースを用意する
コミュニケーション用のスペースとは別に、集中できるスペースの設置も必要であることは前述しましたが、最近では防音・遮音の処理が施された設置型の個室も人気です。「フォンブース」などと呼ばれており、大掛かりな工事を行わなくてもオフィス内に設置する事ができます。その名の通り電話での商談などに利用できるほか、機密情報を扱うようなWeb会議や1人で集中して行う作業などにも利用できます。
今あるオフィス環境を活かしながらも、集中できるスペースを新たに増やすことができるため、オフィスレイアウト変更に柔軟に対応できます。
立って会話ができるスペースを用意する
座って会話する形式の会議室は、どうしても長時間占有する事になりがちです。どうしてもミーティングを開くのが億劫になり、煩わしく感じやすくなります。
コミュニケーション活性化のカギは、短時間のミーティングをさまざまな人間と行うことにあります。効果的なのは、立って会話ができるスペースの設置です。5分、10分など短い時間立ち話を行う習慣を取り入れると、気軽なコミュニケーションを増やすことができます。
リフレッシュスペースを用意する
食事をとったり飲み物を飲んだりしながらリフレッシュできるスペースは、リラックスした雰囲気で交流を行えるため、とても人気があります。社員食堂やカフェスペースを兼ねる形で設置する事が多いですが、工夫して企業のカラーを出しているユニークな例もあります。ハンモック、ピンポン台、ビリヤード台、推薦図書やマンガを置いた書棚、ゲーム機など、実にさまざまな物が設置されているようです。
設置にあたってはアンケートを取り、設置する家具やレクリエーション設備について十分吟味すると、社員の満足度が高まるためおすすめです。
フリーアドレスを導入する
フリーアドレスとは、従来のように社員1人1人に固定席を作らず、誰でもどこにでも席を定められる制度のことです。役職や部門に関係なく、自由に席を決められます。個々人の所持品や資料などは、専用のロッカーやキャビネットに保管します。
フリーアドレスを導入すると、異なる部署や役職の人ともコミュニケーションが取りやすくなります。まったく関わりの無かった社員とも話すきっかけができ、交流の輪が広がります。また、人数分の席を用意しなくても済むため、出社する人数が少ない場合にはスペースの節約になります。
人事部など機密情報を大量に扱う部署はフリーアドレスには向かないため、フリーアドレススペースと固定席スペースとの使い分けが行われている企業もあります。また、毎日同じメンバーや席を選ぶことがないように、運用ルールを定めて周知する必要があります。
社内外のコミュニケーションを促進させるシェアオフィス
社外との協業のためには、社内のオフィスに外部からも利用できるスペースを設置するほか、シェアオフィスの活用も考えられます。シェアオフィスとは、サービス付の共用施設の充実したオフィスです。会議室やデスク、複合機などのビジネスに必要な設備のほか、施設によっては来客受付やカフェなどの共用施設も充実しています。
シェアオフィスをコミュニケーション促進策として活用する例を見ていきましょう。
ラウンジスペースなどのコミュニケーション専用のスペース
シェアオフィスのラウンジスペースは、多くの場合ソファや座り心地の良い椅子などを備えており、フリードリンクや軽食などのサービスを行っています。くつろげる空間で飲み物や食べ物を囲みながら、自由に交流ができるスペースになっています。
シェアオフィスのコミュニケーション用スペースは共用のため、複数の会社の人間が同時に利用する事も珍しくありません。会社の垣根を越えて交流を深める事ができるため、新しいビジネスのアイデアが生まれる事もしばしばです。
個人の作業に集中するブース席
シェアオフィスには作業に集中できるブース席も準備されています。個室に比べて開放感がありますが、パーティションで仕切られており他の人間の目を気にせずに利用できます。シェアオフィスに設置されているブース席を利用すると、普段のメインオフィスから離れた環境で作業により没頭することができ、業務が効率化できる側面があります。
コミュニケーション専用スペースと個人の作業スペースとを両方備えているため、シェアオフィスを利用すると、社内外のコミュニケーションを図りつつも効率よく作業を進める事が可能です。
多種多様な企業が入居するため社外のコミュニティが形成できる
シェアオフィスを利用する企業はさまざまです。法人だけでなく個人起業家の利用もあり、業種も多岐にわたります。通常であれば接点のない企業との間で人脈を築くことができ、シェアオフィスを軸にした新しいコミュニティを形成する事ができます。
所属や年齢に依らない緩い連帯は人間関係の硬直化を防ぎ、新しい刺激をもたらします。幅広い視野が身につき、多くの学びやイノベーションが生まれます。また、自分の考えを発信するうちに自然と自己のスキルやキャリアデザインを見つめ直す事になるため、会社から離れてライフプランを設計する良い機会になります。
まとめ
従来の日本のオフィスは部署ごとに仕事を進めるスタイルが主流だったため、部署内でのコミュニケーションに特化したレイアウトになっていました。ここ数年はコロナ禍の影響もあり、以下のようなニーズに応える必要が出てきています。
- 各人の働き方や業務内容に柔軟に対応できる
- 複数の部署、複数の会社間で協業が行いやすい
- コミュニケーションを促進しつつも、個人作業が集中できるスペースも提供する
本記事では、そういったニーズを満たすオフィスレイアウトのポイントを解説しました。また、社内外のコミュニケーションをより促進させる策として、シェアオフィスの活用についてもご紹介しました。コミュニケーションを活性化させるオフィス環境のアイデアについて、自社の状況と照らし合わせながら導入を検討してみてください。