シェアオフィスの市場動向とトレンド|オフィスは今後どう変わるのか
2022年8月2日
シェアオフィスとは?
まずは、シェアオフィスの概要についてご紹介します。シェアオフィス(シェアードオフィス)は、1つの部屋やフロアを複数の企業でシェアして使用するオフィスのことです。業務に必要なデスクやイス、複合機などの設備などが用意されていることが一般的で、契約後すぐにビジネスを始められます。これらの設備を複数社で共有することが多いですが、その分月額の賃貸料が低く抑えられていることが特徴です。
シェアオフィスには、それぞれの企業が専用で使えるスペースが用意されていることも多く、コワーキングスペースよりは独立性が保たれています。また、トイレや受付機能、会議室などの施設設備も他の企業と共有です。
シェアオフィスの中には法人登記が可能なサービスもあり、郵便受け取りなどに対応している場所も増えてきているため、ベンチャー企業やスタートアップなどの小規模事業者向けのオフィスとして注目が集まっています。
オフィスの役割は変化しているが依然としてオフィスは必要とされている
テレワーク・リモートワークが普及したことで、スタッフがオフィスに常駐しない企業が増加しています。
しかし、法人登記する際の本店所在地や郵便物の送付先、顧客とのリアルな打ち合わせ場所として利用するために、リアルなオフィスを求める企業は多いです。また、社員同士の交流を積極的に図るため、オフィスへの出社を求める企業も少なくありません。
コロナ禍によってオフィスの役割は変化しましたが、依然としてオフィスは必要とされているのが実情です。
テレワークの普及でオフィスはどう変わったのか?
テレワーク(リモートワーク)が普及したことで、オフィスの役割は変化しています。
テレワークが一般的になる以前は、オフィスに出社して働くことが当然でした。つまり、オフィスの役割を意識しているスタッフは少なく、漫然と働いている人も多かったでしょう。
しかし、テレワークが当たり前になると、オフィスでの仕事に目的意識が持たれるようになりました。「オフィスでなければできない業務」のためにオフィスが用意されているといった目的意識を社員が持つことで、生産性が向上することが期待されます。
また、テレワークが普及する前は当たり前だった「リアルなコミュニケーション」を取ることも、オフィスの役割として重要です。
テレワークの普及によって、それまでは役割が意識されていなかったオフィスにも、目的意識が持たれるようになったと言えます。
加えて、テレワークの普及はオフィス形態にも影響を与えています。これまでのオフィス形態は、それぞれの企業が自社保有している建物や賃貸オフィスを利用することが一般的でした。
しかし、テレワークの推進によって在宅勤務やシェアオフィスの活用が広まり、今まで以上にフレキシブルオフィスの需要が高まっています。
*フレキシブルオフィス:シェアオフィス、レンタルオフィス、コワーキングスペースなどの総称
世界のシェアオフィス市場動向
ここからは、世界のシェアオフィス市場の動向についてご紹介します。
シェアオフィスの市場規模は世界的に伸びており、年間成長率は20%とも言われる成長産業です。この傾向は日本にも当てはまり、シェアオフィスを含むフレキシブルオフィス市場は右肩上がりに成長しています。
日本におけるフレキシブルオフィスの数や規模
株式会社日本能率協会総合研究所が2021年12月に発表したフレキシブルオフィス市場の調査結果によると、2020年に約800億円規模だったフレキシブルオフィス市場は、2021年には1,000億円規模になり、その後2026年には2,300億円規模になると予想されています。
出典:フレキシブルオフィス市場2026年に2,300億円規模に
また、ザイマックス総研のフレキシブルオフィス市場調査2022によると、2020年には600強だった東京23区内のフレキシブルオフィス拠点数は、2022年には1,080件と推計されています。
出典:フレキシブルオフィス市場調査2022 | ザイマックス総研の研究調査
このように、日本におけるフレキシブルオフィスの数や規模は、年々増加しているのです。
増加の要因
ここからは、フレキシブルオフィスが増加している要因について考察します。
起業家・フリーランス人口の増加
フレキシブルオフィスが増えている背景として、起業家・フリーランス人口の増加が考えられます。
株式会社東京商工リサーチが2022年5月に発表した「2021年「全国新設法人動向」調査」によると、2021年に新設された法人数は14万4,622社で前年比10.1%増となり、2年ぶりに増加傾向に転じています。また、新設件数は2017年を抜いて過去最多でした。企業数の増加により、フレキシブルオフィスの利用者も増えることが推察できます。
出典:2021年「全国新設法人動向」調査 : 東京商工リサーチ
また、ランサーズ株式会社が2021年3月に発表した「フリーランス実態調査2021」によると、2021年のフリーランス人口は約1,670万人でした。この調査結果は、フリーランスが日本の労働人口の24%を占めていることを表します。2018年〜2020までのフリーランス人口が約1,100万人程度で横ばいだったことを鑑みると、近年のフリーランス人口増加もフレキシブルオフィスの需要増につながっていると考えられます。
ベンチャー企業の増加
先ほどご紹介したように企業の新設が増えることで、フレキシブルオフィスのターゲットであるベンチャー企業も増加しています。
経済産業省が2021年に発表した「大学発ベンチャー実態等調査の結果を取りまとめました」によると、2020年10月時点での大学発ベンチャー数は2,905社で、2109年の2,566社を抜き過去最多でした。
大学発ベンチャーを含め、社会的にベンチャー企業が増加している情勢も影響し、フレキシブルオフィスは数を増やしています。
企業のBCP対策としての利用増加
BCP対策としてフレキシブルオフィスを使う企業も増えています。BCPとは「Business Continuity Plan」の略称で、日本語では「事業継続計画」と訳されます。
自然災害や火災などの緊急事態が発生した際にも事業を継続できるよう、ビジネス機能を分散させることが推奨されています。
フレキシブルオフィスを使えば比較的短期間でBCP対策が可能なこともあり、災害対策の一環として利用企業も増えてきました。
企業のサテライトオフィスとしての利用増加
最後に、サテライトオフィス(支店)としてフレキシブルオフィスを使う企業も増えています。
自社で一からオフィスを借りる場合、設備の用意などで多額の初期コストが必要です。しかし、フレキシブルオフィスであれば設備が完備されているため、コストをかけずにサテライトオフィスを展開できます。
働き方が多様化し、勤務地を分散させる企業も増えている中、フレキシブルオフィスの需要も増加していると言えます。
シェアオフィスをうまく活用するには
ここからは、シェアオフィスをうまく活用するためのポイントをご紹介します。
業種・業態にあったオフィスを選ぶ
まず、自社の業種・業態にあったオフィスを選ぶことがポイントです。
シェアオフィスはサービス提供している事業者によって、力を入れている設備・環境が異なります。そのため、自社が必要としている機能がオフィスに備わっているかどうかを確認してください。
例えば、頻繁にクライアントと打ち合わせがあるコンサルティング業の場合などは、ミーティングスペースが充実したシェアオフィスを選ぶと良いでしょう。中には会議室や応接室がないシェアオフィスもあるので、事前にしっかり確認してください。
また、安定したインターネット環境が必要なWeb関連事業・IT関連事業の場合は、Wi-Fi環境も確認してみましょう。通信速度が遅いと業務に支障が生じるので、契約前に実際に試してみることをおすすめします。
オフライン環境が必要な業務を見直す
続いて、オフライン環境が必要なアナログ業務を見直すこともポイントです。
例えば、請求書や領収書など経理関係の処理を紙で行っている場合は、シェアオフィスでの業務は難しいかもしれません。しかし、電子帳簿保存に対応すれば、経理業務をオンラインで完結させることも可能です。
各種クラウドサービスを使ってオフライン業務をオンライン業務に転換することで、シェアオフィスをより効果的に利用できるようになります。
シェアオフィスの今後
すでに多くの企業が利用しているシェアオフィスですが、そのサービス形態や事業形態は発展途上でもあります。ここからは、シェアオフィスを含めたフレキシブルオフィスの今後についてご紹介します。
ウイルス対策の徹底
複数企業のスタッフが利用するシェアオフィスの特性上、ウイルス対策の徹底がより一層図られていくでしょう。現在でも、オフィスに入る際の検温やアルコール消毒の実施はもちろん、運営事業者による定期的な除菌作業は多くのシェアオフィスで行われています。これらの感染対策は、今後も継続して徹底されるでしょう。
また、ウィズコロナ・アフターコロナの動向として柔軟な働き方に対応するために、サテライトオフィスとしてシェアオフィスを契約する企業の増加が見込まれます。新規契約の内見時はオンラインで可能になるなど、IT技術の活用によるウイルス対策も進んでいくことが期待されます。
無人シェアオフィス
シェアオフィスの運営スタッフの働き方改革の一環として、無人シェアオフィスが増えています。
受付(コンシェルジュ)を常駐させる場合、来客対応などの対外業務や消耗品の補充や清掃などの管理業務などが定期的に行われたり、受付に人がいることによって防犯対策になるメリットがあります。そのため、多くのシェアオフィスでは受付スタッフが常駐しているのが実情です。
一方、受付スタッフの業務が多岐に渡りすぎてしまったり、スタッフがいない場合にシェアオフィスが開錠されないなどのデメリットもあります。
このようなデメリットを解消するため、受付システムのデジタル化や電子錠導入により、シェアオフィスの無人化が図られるでしょう。無人化対応を含んだデジタル化を進め、24時間365日利用可能なシェアオフィスはますます増えていくことが期待されます。
人の履歴、流動性管理
シェアオフィスにおける人の履歴、流動性管理も、これからのシェアオフィスに備わっていくでしょう。
人の履歴をシェアオフィス側で管理することで、万が一コロナウイルスの感染者が発生した場合も迅速に対応できます。
また、複数社が利用するシェアオフィス内における情報セキュリティの観点からも、人の履歴は重要です。人の履歴を管理することで、流動性が高くセキュリティに不安を抱かれやすいシェアオフィスでも、安心して情報を扱えるようになります。
個人情報は守りつつ、人の履歴を管理することがシェアオフィスには求められているのです。
増加するシェアオフィスをうまく活用してオフィス環境を整える
今回の記事では、シェアオフィスの市場動向やトレンドについて考えながら、今後のオフィスのあり方についてご紹介してきました。
テレワークやリモートワークが普及した現代社会においても、依然として企業はオフィスを必要としているのが実情です。そのような状況の中、複数の企業で施設をシェアして使うシェアオフィスは、コストがかからないことや柔軟な働き方が可能なことで注目されています。2026年には、シェアオフィスを含むフレキシブルオフィス市場は、2021年比で約2倍以上になるという市場予測もあるため、今後ますますシェアオフィスの数は増加していくでしょう。
起業したてのベンチャー企業やスタートアップ企業はもちろん、フリーランスや個人事業主などの小規模事業者は、積極的にシェアオフィスを活用しています。また、中小企業や中堅企業がリスクヘッジの観点でオフィスを分散させる際も、初期コストやランニングコストが安く抑えられるシェアオフィスを活用するケースが増えてきました。
シェアオフィスを上手に活用すれば、それだけ企業としての可能性も広がります。オフライン環境が必要なアナログ業務を見直し、自社の業種・業態にあったオフィスを選ぶことで、上手にオフィス環境を整えていきましょう。
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